EUCと隠れIT(ShadowIT)
「EUCの促進と指導は情報システム部門の仕事だ」と論じた本もあるくらいです。
でも、実はここには難しい問題が内在しています。
EUCと言っている間は良いのですが、利用部門内にいるPC好きの社員が表計算ソフトに飽き足らず、Microsoft Accessなどをつかって簡単なデータベースを作り、業務アプリケーションのようなものに手を出し始めるのです。そして、それがエスカレートすると、データベースにフロントエンドのWebシステムをつけて「ユーザフレンドリなシステム」が完成するのです。ここまでくるとEUCを越えてEUD(End User Development)になってしまいます。情報システム部門は全体最適を求めるという性質(使命?)があり、個別部門向けのシステムの最適化に手を出す余裕はありません。これに端を発するEUC/EUDの問題には次のようなものがあります。
- 情報システム部門が提供する業務アプリケーションとEUCで必要なデータが二重入力される。
- それに気づいたEUC部門(この記事では社内利用部門をこう呼ぶことにします)は元システムからのデータのダウンロードやリアルタイムのリンクを情報システム部門に求めるようになる。
- それに情報システム部門が対応しないため、EUC部門が、直接、外部ベンダに問い合わせをかけ、発注まで行ってしまうという組織のガバナンスを逸脱する事態が発生する。
- また、発注という方式ではなく、外部ベンダやテンプスタッフを常駐させるケースもある
- 外部ベンダが情報システム部門ではなく、直接、利用部門にアプローチするようになる
- この際に必要な情報システム化の予算もEUC部門で保持することになる
- この時点で、情報システム部門とEUC部門の間に確執が生じる
- EUC部門内ではEUC担当者が(明示的に、または、暗に)任命され、本来の業務ではないIT業務を行うようになる(これを隠れITまたはシャドーIT, ShadowITと呼ぶ)
- EUC担当者は嬉々としてMS Access等でたくさんの小さな業務アプリケーションを作り始める
- ただし、その際に、ドキュメンテーションの整備はなされない
- また、セキュリティの意識は極めて低い
- かつ、個人での単独業務として行うため永続性は考えられない
- 時に(しばしば)EUC担当者がオタク化し、情報システム部門員の知識を越えてしまう
- EUC担当者が退職/異動した場合、EUCとして作成されたシステムを利用した業務が止まってしまう
- 困ったEUC部門は情報システム部門に助けを求めるが、情報システム部門は相手にしない(相手にしたくても時間が無い、ドキュメントがない・・・)
- EUC部門は全体の流れに違和感を感じEUC担当者という概念をやめることになるが、EUC担当者は、はしごを外された形になり、本来業務にも復帰できなくなる。
- 会社全体で見た場合のコストパフォーマンスは悪い
上の17個のうちのほとんどは「情報システム部門は困るが、利用部門は困らない」というものです。隠れITの発生源は「情報システム部門の弱さ(技術力の弱さ、立場の弱さ、ガバナンスの弱さ、攻めと守りのアンバランス)」にあると思っています。まだまだ歴史の浅い情報システム部門です。隠れITの問題から情報システム部門のガバナンスを考えてみるのも有意義ではないでしょうか。
隠れITについて既に扱い方を明確にされている企業もあると思いますし、私も対応を行いましたので、別の記事で紹介いたします。
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